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2023.07.19

獲りすぎニッポン

「だしの伝道師®」土居でございます。

SDGsの観点からも海洋資源を大切に扱いたいと思います。

 

ウナギ

近年、マグロやカツオが漁獲規制の対象となり、日本の魚食文化に少なからず影響を及ぼしていますが、これまで獲りすぎてきた日本の漁業にとっては当然の報いなのかもしれません。
最新の漁法で獲れるだけ獲って帰港するも大量水揚げ故の安値で薄利となり、穴を埋めるべくまた獲りに行く。だから資源が枯渇し、規制対象となるのです。

たとえばウナギ。1960年代に200トンを超えていたシラスウナギ(ウナギの稚魚)の国内漁獲量が、最近は数トンレベル。1kgあたり250万円という銀より高い値がついてしまいました。
ニホンウナギの稚魚は60年代をピークに減少し、代替種として開拓されたヨーロッパウナギの稚魚もまた減少。気軽にうな重が食べられるようにと世界を駆けてくれた商社マンのビジネス魂が、あだとなってしまいました。

 

カツオ

そしてカツオ。日本のカツオ巻き網漁船の技法は世界一です。特に、プリント技術で製造し、2億円もするという「結び目のない網」が秀逸。結び目がないから海中に投入後の落下速度がものすごく速く、カツオの群れをもれなく囲い込むのです。
もれなく獲るから大漁となり、さらに、海面近くの魚と水深200mの魚を同時に獲るから品質がばらつき魚価も下がってしまうという悪循環。

かつお節に向いているのは表層近くにいる脂肪分の少ない魚なんですが、海水温が低い水深200mの魚は脂が乗っているのです。昔の一本釣り漁法は、資源保護的にも魚質的にも優れていたのです。漁業技術の発達が、あだとなってしまいました。

 

イカ

最後にイカ釣り。燃油高騰による一斉休業が話題となったイカ釣り漁業ですが、あの集魚灯、実はそれほど多くの光量を必要としません。昔は、ローソクや50Wの裸電球で操業していたらしく、現在の2~4割の光量で十分。
つまり、過剰な光量は他船との競争の結果なのです。誰かが抜け駆けして光量を増やすとイカがそっちに集まるため、競うようにして明るくなってしまいました。

飽食ニッポンを支えてきた、獲りすぎニッポン。資源管理のための漁獲規制を受け入れ、しばらくは辛抱するしか策がないのかもしれません。我々も大切なカツオ資源を100%無駄なく活用する「かつおまるごとプロジェクト」を進行中です。追ってご報告させていただきます。

マルトモ株式会社 マーケティング本部 本部長
土居幹治 専務取締役

愛媛大学農学部農芸化学科を卒業後、マルトモ株式会社に入社して
研究開発に従事。九州大学への論文提出で農学博士号取得。
「だしの伝道師Ⓡ」という二つ名で小学校や公民館での出前授業を実施し、
かつお節文化の拡散に邁進中。

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