土居幹治 専務取締役
愛媛大学農学部農芸化学科を卒業後、マルトモ株式会社に入社して
研究開発に従事。九州大学への論文提出で農学博士号取得。
「だしの伝道師Ⓡ」という二つ名で小学校や公民館での出前授業を実施し、
かつお節文化の拡散に邁進中。
「だしの伝道師®」土居でございます。
カツオ原魚の品質が、最終商品である花かつおの品質を左右するといわれています。
では、その目利きポイントとは…。
カツオ原魚の目利きポイントは、鮮度がいいことと、脂肪分が低いことです。
鮮度がいいとうま味成分であるイノシン酸が多くなり、だしがしっかりと効いてきます。この、イノシン酸のお話は後日改めてご紹介します。
まずは脂肪分です。
脂肪分が多いと、最終商品の花かつおが酸化しやすくなり、味、香り、見た目のすべての点で品質が下がってしまいます。袋入りの花かつおは窒素ガスを充てんして酸素を追い出し、酸化を防いでいますが限界があります。
カツオの脂の乗り方は、腹部のしま模様で大まかに判断できます。しま模様がはっきりしているカツオほど脂の乗りが少なく、かつお節に向いている原料です。お刺身でおいしいカツオは、逆にしま模様がぼやけているカツオ。
つまり、お刺身でおいしいカツオとかつお節に向いているカツオは脂の乗りが真逆なのです。
そんなよこしまな理論は信用できないって?
いやいや、そんなことはありません。カツオのしま模様は、水産学的には、よこしまではなくたてじまになるのであります(笑)
「昔のかつお節はうまかった」という声を時々耳にします。確かにそうかもしれません。昭和40年代前半頃のかつお節は、日本近海に北上してくる脂の乗ったカツオを原料として使用していました。各家庭の台所で手削りしていた時代は、多少脂が乗っていても、削ってすぐ食べるから酸化のリスクがなかったのです。
酸化しなければ、脂の乗ったかつお節はうまい。
その後、昭和50年代に入り凍結技術が確立すると、大量に漁獲できる赤道直下のカツオを使用するようになり、日本近海のカツオは、主に刺身用に向けられるようになったんです。海水温が高い赤道直下のカツオは脂の乗りが少なく、かつお節には最適です。
スネ毛や脂性が嫌われるいま、かつお節の世界でもスッキリ系のフェミ男くんならぬフェミカツオくんがもてはやされているのです。
脂の少ないカツオを使用しつつ、コクとうま味のあるかつお節はできないか。そんな思いを実現したのが「プレ節Ⓡ」です。カツオを煮る際の温度条件を下げ、従来の「堅ゆで卵」状態から「半熟卵」状態で煙を当てることで、たんぱく質の加水分解が激しく起こり、アミノ酸を増やすことに成功したのです。
アミノ酸は水に溶ける成分です。水に溶ける成分が多いから、口の中でとろける感じになり、もさもさするという従来の花かつおの欠点を克服することができました。もちろん、25ミクロンの薄さに削ることも重要ですが、くちどけにはアミノ酸の多さもかかわっているのです。
愛媛大学農学部農芸化学科を卒業後、マルトモ株式会社に入社して
研究開発に従事。九州大学への論文提出で農学博士号取得。
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