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2025.03.12

かつお節にバッハ

「だしの伝道師®」土居でございます。

枯れ木に花を咲かせます。

 

かつお節にバッハ

植物に音楽を聴かせるとよく育つ、というような微妙な話は昔からあります。かくいう私も、かつお節のかび付け時にバッハを流したりしました。かび付け庫の湿度90%にラジカセが悲鳴を上げ、実験は頓挫しましたが…。

 

実は、こんなエセ科学のような話が最近肯定されようとしています。

西オーストラリア大学の研究チームは、エンドウマメの苗がパイプ内を流れる水の音を検知し、水が手に入らないにもかかわらずパイプに向かって根を伸ばす現象を確認しました。また、米国オハイオ大学の研究チームは、シロイヌナズナ属の植物にイモムシが葉を食べている音を聞かせると、毒素を作り出す量が増加するというデータを得たんです。

 

フロリゲン

植物が音を感知しているとすれば、「枯れ木に花を咲かせましょう」という花咲かじいさんの掛け声を理解してくれるかもしれません。なにせ、植物学者の夢は、いつでも花を咲かせられる「花咲かじいさんの灰」を作ることなのですから。

植物が花を咲かせる際に関与しているのは「フロリゲン」というたんぱく質。葉が日の長さを感知し、フロリゲンを介して茎の先端に「花を咲かせるのに十分な日の長さになった」ことを伝達するんです。現時点では、まだフロリゲンを製剤化できていないため、植物への応用はアナログで日長時間を操作するしかありません。

例えば秋の短日を認識してフロリゲンを合成し花を咲かせるキクは、電照によって日を長くして夏と勘違いさせ、花芽の形成を遅らせて周年供給を可能にしています。

 

花を咲かせる

音を認識したり日の長さを認識したり、植物の能力は凄いですね。

こんな話を若手研究者に熱く語ったんですが、どうもうまく伝わりません。感想を聞くと「花咲かじいさん」の話など知らないというんです。どうやら、「はらぺこあおむし」みたいな高尚な童話ばっかり読んでいたみたい。

 

かつお節を削ってきれいな花かつおに仕上げるのも難しいけど、人材の花を咲かせるのもひと苦労なのであります。

 

マルトモ株式会社
土居幹治 専務取締役

愛媛大学農学部農芸化学科を卒業後、マルトモ株式会社に入社して
研究開発に従事。九州大学への論文提出で農学博士号取得。
「だしの伝道師Ⓡ」という二つ名で小学校や公民館での出前授業を実施し、
かつお節文化の拡散に邁進中。

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