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2025.06.18

東の枯節、西の荒節

「だしの伝道師®」土居でございます。

東西対決です。

 

ツクシの卵とじ

東京在住時、ツクシの卵とじのおいしさを、誰も理解してくれませんでした。ツクシなんて、その辺の雑草でしょと。

調べると「東のコゴミ、西のツクシ」という言葉がありました。コゴミはクサソテツという山菜の若葉で、東日本でのみ食べられる野草だそうです。

今さらながら、東西食文化の違いに驚かされます。

 

新潟女子短大名誉教授の本間伸夫先生は、「東西の文化は縄文人と弥生人がせめぎ合った結果、フォッサマグナで分かれた」と語っていました。

フォッサマグナは中部地方で本州を横断する大地溝帯で、地質学の世界では東北日本と西南日本の境目とされています。

 

 

東西の違い

東西の違いを列記してみました。

東の豚肉、西の牛肉…これはよく知られる食文化。武士が多い東日本には馬も多く、牛に慣れた農民が多い西日本と違って牛を飼う余裕がありませんでした。

よって、飼いやすい豚が増え、豚肉嗜好になったんです。

 

東の鮭、西の鰤…正月のご馳走として食べる魚の違いです。鰤文化圏で育った私は、上野アメ横の新巻鮭が師走の風物詩であることに、ちょっと違和感がありました。

東の4秒、西の2秒…これは、ゲンジボタルの点滅間隔の違い。つまり、西のホタルの方がせっかちなんです。ヒトもそんな感じですが、地磁気やマグマのフォースが何かしら影響しているのでしょうか。

 

かつお節の東西

そして、かつお節は、東の枯節、西の荒節。土佐や薩摩で生産したかつお節を江戸まで運ぶには、日持ちする枯節にする必要があったからか、はたまた輸送中にかびちゃったからか。

いずれにせよ、上品な枯節は江戸の蕎麦つゆとの相性がよく、香りが強く酸味のある荒節は、だし香る大坂のうどんつゆにピッタリなんです。

 

さまざまな東西文化がフォッサマグナで線引きされるのは実に不思議です。

ツクシの卵とじを頬張りながら、数千万年前の地質変動に思いを馳せるのであります。

 

 

マルトモ株式会社
土居幹治 専務取締役

愛媛大学農学部農芸化学科を卒業後、マルトモ株式会社に入社して
研究開発に従事。九州大学への論文提出で農学博士号取得。
「だしの伝道師Ⓡ」という二つ名で小学校や公民館での出前授業を実施し、
かつお節文化の拡散に邁進中。